施術台に横になったあと、小さな声でこう尋ねられることがあります。「あの……どのくらい深く刺すんですか?」。出雲市の山岡鍼灸院院長・古瀬が解説します。
「刺す」という一語だけが頭に残ると、どこまで入るのか分からず、身構えてしまうのは当然のことだと思います。前回は鍼の太さについてお話ししましたが、今回はもう一歩踏み込んで「深さ」の話をさせてください。
深さは一律ではなく、場所によって変わります
まず知っておいていただきたいのは、鍼を刺す深さに決まった基準があるわけではない、ということです。同じ方の体でも、どこに使うかで深さはまったく変わります。
おおよその目安
- 顔や手のように皮膚が薄いところ:数ミリほど
- 背中やお尻のように筋肉が厚いところ:数センチ程度
深さが場所によって変わるのは、目指している場所が違うからです。皮膚のすぐ下で十分に届く場所もあれば、厚い筋肉に覆われていて、少し進めないと届かない場所もあります。深く入れること自体が目的ではなく、届けたい場所に届く分だけ、という考え方です。
数字にすると「そんなものなのか」と拍子抜けされる方が多いところです。実際、施術後に「もっと深いのかと思っていました」と言われることは珍しくありません。頭の中で想像していた深さと、実際の深さには、それなりの開きがあるようです。
深く刺したほうがよい、という考え方はしていません
「深いほどよく効く」というイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、鍼灸にそうした決まりはありません。大切なのは、その方の体質やお悩みに合った“ちょうどよい深さ”を選ぶことだと考えています。
当院では整動鍼®という方法を用い、少ない鍼で体の動きを確かめながら進めていきます。本数を絞る分、一本ごとに「どこへ、どのくらい」を丁寧に見極められるのが、この方法の良さだと感じています。
- 刺激に敏感な方には、浅めから様子を見て
- こりが厚く出ている部位には、必要な分だけ
- 同じ方でも、その日の疲れ具合で調整を
前回は問題なかった深さでも、寝不足や疲れが重なった日には響き方が変わることがあります。体調が違えば感じ方も変わりますので、「今日は少し違うかも」と思われたら、その場で遠慮なくおっしゃってください。
もうひとつ付け加えると、深さと痛みは必ずしも比例しません。浅い部位のほうがチクッとした感覚が出やすいこともありますし、深く入っていても本人はほとんど気づかないこともあります。「深い=痛い」という結びつきは、いったん置いておいていただいて構いません。
気になることは、施術前にどうぞ
臨床歴7年・延べ10,000件を超える施術のなかで感じているのは、聞きそびれた不安をそのまま抱えて受けるより、先に口に出していただいたほうが、結果的に楽に受けられる方が多いということです。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思われるような小さな疑問こそ、体をこわばらせる原因になります。当院では施術に入る前にお話しする時間を取っていますので、深さのことでも、鍼を置いておく時間のことでも、思いついたままお尋ねいただければと思います。当日の流れをあらかじめ知っておきたい方は、施術の流れのページもご覧ください。
いま決めなくても大丈夫です
この記事を読んで、今日すぐご予約いただく必要はありません。ただ、「深く刺されそうで怖いから」という理由だけで選択肢から外れているのだとしたら、その心配は少し軽くしていただけたらと思って書きました。
お腹の不調が長く続いている方は過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア、気分や眠りの波が気になる方は自律神経の不調のページに、当院の考え方をまとめています。読み物としてお目通しいただき、必要になったときに思い出していただければ十分です。
無理のない範囲で、気になることからお気軽にお尋ねください。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、感じ方や変化には個人差があります。気になる症状が続く場合は医療機関にご相談ください。
同じお悩みでお困りの方へ
出雲市の山岡鍼灸院では、胃腸・自律神経の不調に特化した整動鍼®施術を行っています。
